社員の独立や引き抜きは「裏切り」ではない――個人の自由と経営の改善を考える

2025年6月10日
有限会社溝口製作所 代表取締役 溝口 徒然なるままに。
こんにちは、有限会社溝口製作所の溝口です。今日は、経営者として日々感じることの一つ、社員の独立や他社への引き抜きについて、私の考えを皆さんと共有したいと思います。
世の中には、社員が会社を辞めて独立したり、他社からオファーを受けて転職したりすることを「裏切り」と捉える経営者の方もいらっしゃるようです。
確かに、社員が抜けることは会社にとって痛手です。特に中小企業である私たちのような製造業では、一人ひとりの技術や経験が貴重で、人員が減ると生産や納期に影響が出ることもあります。経営上、困る場面があるのは事実です。
ですが、私は社員の独立や転職を「裏切り」とは全く思いません。それは個人の自由の範疇であり、むしろ尊重すべき選択だと考えています。

個人の自由と成長を応援したい

人は誰しも、自分の人生をより良くするために選択をします。独立して自分の夢を追いかけたい、新しい環境でスキルを試したい、より良い条件で家族を支えたい――そんな思いは、ごく自然なものです。私自身、前の職場を退職したとき、挑戦と不安のなかで一歩を踏み出した経験があります。だからこそ、社員が新しい道を選ぶ気持ちはよく理解できます。
社員が当社で働いた経験や技術を活かして、次のステージで活躍してくれるなら、それはむしろ誇らしいこと。溝口製作所が、彼らの成長の土台やステップになったのだと思えば、送り出す側としても前向きな気持ちになれます。

経営上の課題と切り離して考える

もちろん、人員が減るのは簡単なことではありません。製造現場では、熟練の技術者が一人抜けるだけで、品質や効率に影響が出る場合もあります。後任の採用や教育には時間とコストがかかり、経営者としては頭を悩ませる場面も正直あります。
ただ、それは経営上の課題であって、社員の選択を非難する理由にはなりません。人の流動性はどの業界でも起こりうることですし、むしろ変化に対応する柔軟さこそ、中小企業が生き残る鍵だと考えています。
辞めたいと思う背景には経営者の責任も
そもそも、従業員が「辞めたい」と思ってしまう背景には、経営者の経営能力が関係している場合もあると、私は自省しています。給与や待遇、働きやすさ、成長の機会、職場の雰囲気――これらが十分でなければ、社員は新たな道を探すのも自然なこと。裏切られたと怒ったり、失望したりする暇があるなら、経営者として会社の環境を改善することに力を注ぐべきだと考えます。